月下星群 〜孤高の昴

   “かげろう幻惑”
  


……暑っついなぁ。
此処って建物の中のはずなのになぁ。
降りるほど海ん底へ向かってるらしくって、
刃物の森とか魔物の迷路とかがあった、
その下の階なのになぁ。
こうまで暑いっていうと、
アラバスタの砂漠とか思い出すよなぁ。

『お前、雪の降らねぇ島育ちなくせに、
 暑いのに とことん弱ぇえって、なんか変じゃねぇか?』

雪が降ると際限なく はしゃぎやがるくせに。
それどころか、
あの極寒のドラムの雪山を、ほぼ無装備で踏破したくせに。
日照りにゃあ す〜ぐ音を上げやがってよなんて。
なんかそんな憎たらしいこと言ってやがった奴がいたよな。
そういう自分だって、
雪ん中をほとんど裸同然で歩き回ったもんが、
アラバスタじゃあ

  ……えと

チョッパーとかウソップとか、
担いだり引き摺ったりしてやってた、
信じらんねぇタフさだったよなぁ。
ちっちっ、
体力じゃあ とっつかっつだって思ってたのによ。
やっぱあいつは“化けもん”なんだろな。
まま、そんくらいでいてもらわねぇと、
海賊王の右腕とそれから、
大剣豪には 到底収まれねってもんなんだろーが。


 ……………………………………暑いなぁ。

同んなじ暑くるしいんなら、
もっとこう、
好きなもんに くるまれての“暑い”がいいなぁ。
むっくむくの冬毛のチョッパーと、
いつの間にか一緒くたになって甲板で昼寝してたとか。
サンジが“おらおら起きな”って、
焼きたての蜂蜜パンを寝てる鼻先に持って来たりとか。


 それか、えっと、
 他ってぇと、うっとだな………


いつから着てんだか、
随分とぺらんぺらんの木綿のシャツは そんでも、
直射日光をじかに浴びるよりかは、
マシなような役目を果たしているものか。
懐ろへ ぱふんって頬っぺくっつけると、
うん、じかって感じじゃない、
もさっとした布の感触があったっけ。
それも鍛えてっからか、
胸板やら背中やら、二の腕やらの肌は、
よ〜く使い込んだ革のカバンみたいに、
なんか丈夫そうなゾロだったから、

 『カバンってなぁ何だ。』
 『カバンはカバンだ。』

板や木よりは柔らかいけどな、
石みてぇに冷たかったり重かったりはしねぇけどな、
でもなんか、じかに触った感じが、
俺の腕なんかより、ずっと頑丈そうなんだもんよ。
顔だって…デコでクギ打てんじゃねぇか?

 『うっせぇな。そりゃお前はゴムだしな。』
 『うっせぇな。面の皮が厚いよかマシだ。』

お、上手いこと言いやがんのな、なんてって、
マストへ凭れたまんまの頭の後ろへ手枕回して、
まるでバンザイしてるみたいに上げたまんまで、
こっちの話 聞いてたゾロなのが、

 ―― よくもそこまで無防備でいられるもんだ、と

フランキーやブルックを感心させてたらしかったけど。
俺としちゃあ、それってうんと物足りなかった。
早いこと手ぇ降ろせって、いつも思った。
ゴツゴツの胸板もパンパンな肩や膝も嫌いじゃなかったけど、
刀をじゅーおおむじんに振り回すごっつごつの腕が、
背中に回されて出来る輪っかの中に収まんのが、
もっと一等大好きだったから。

 なんでだったんだろな。
 守られてってるようで
 ホッと出来るからじゃあなくって。

 ………うん。

こっちからばっか擦り寄ってんじゃなくて、
ゾロの方からも、
おいでって気持ちあってのことなんだってゆ、
そんなことの表明みたいだからだろな。
ゾロって筋肉質だから、けっこ体温は高い方でさ。
でもって、
ゾロに言わせりゃ、俺は子供体温だから、
冬場はちょーほーするなんて いつも言っててよ。
そんな同士でくっついてちゃあ、
けっこ暑くるしいはずなのにな。
けど、なんか。
そやってもらうのが、一番落ち着けて、
暑くても、
そのままうたた寝出来たほどだったのにな。


  〜〜〜〜〜〜〜〜〜えと。///////////



 あれ? 何で俺、階段昇ってんだ?
 下へ降りなきゃなんねぇのによ。
 くそ〜〜〜、どうなってんだっ。

 あ"? 今、何か聞こえたような?
 って、どわっ!
 ライオンが…っっ。
 …って、誰だ?
 俺に代わって、こいつボコりやがったのは?


  「………助けに来たぜ。」


  え? ゾロ、か?







  〜 to be continued.〜  10.01.17.


  *判りにくいSSですみません。
   既出『
風の向こうで』のアンサー篇、
   インペルダウン、灼熱地獄の辺りでございます。
   関西地方でも、監獄島へボンちゃんがやっと登場ですvv
   うっかりしてたのが、
   アニメだと“声だってコピー出来る”という点も
   しっかと再現されるんでしたっけね。
   中井さんのお声であのポーズはなかろうと思いつつも、
   うああ、久々のゾロだ〜〜〜っと、
   ついついヌカ喜びしちゃいましたよぉ。
   (もーりんさん、引用がおかしいです。)
   ルフィも“ゾロじゃないのは残念だったけど”と
   どさまぎで嬉しいことを言ってくれてましたしねvv

   ……ただ、なんでゾロに化けたボンちゃんだったんだろ。
   アラバスタで直接対決したのはサンジだし、
   そのサンジを騙そうとして、
   ウソップのゴーグルを盗ったんでしょうにね。
   あの時点でのルフィ海賊団で、
   一番頼れるといやぁ こいつかな?って、
   そういう思い出し方をしたんでしょうかね?


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